夢のトイレ73

夢のトイレ73  車の中では、数十匹のハエやアブが狂ったように唸りを上げて飛び交っていました。でもむき出しの下半身にまとわりつかれるよりは、まだマシです。ボクは慎重に車を後進させながら元の林道へ戻りました。便意は、もはや限界・・・  一瞬の油断が絶望へとつながる人生最大級の窮地です。ボクは林道の端に車を寄せて止めました。左手には杉林、右手には畑が広がっています。車の外のハエやアブは、先ほどの林の中ほどではありません。ボクは急いで車を降り助手席側に回り込みました。そして車と林の間でもう一度ズボンとパンツを下ろししゃがみこみました。いつ人や車が通ってもおかしくない、そんな不安もよぎりましたが、ボクの排便反射はもはや誰も止めることはできませんでした・・・  噴火湾の浜辺に寝転びながら、ボクはそんな過去の苦い経験を思い出していました。ここには杉林の代わりに堤防があります。そして反対側には畑よりもずっと大きい噴火湾の海が広がっています。林道では人や車の往来を気にしなければなりませんでしたが、ここならその心配もありません。 (つづく)