夢のトイレ68

夢のトイレ68  そしてどれくらいの時間が過ぎたのか。ボクは嘔気を伴う下腹痛で目が覚めた。開いた目に映った空は、青色が更に濃さを増して広がっていた。ボクは堤防の下の砂浜に仰向けになり倒れていた。何が起きたのか理解はできなくても、すでに限界に達している便意の存在はすぐに分かった。ボクはズボンも靴も履いている。そしてこうして倒れている。この状況から考えつくのは、ボクは堤防からずり落ちて少しの間ここで意識を失っていたということ。海の中での出来事は夢だったということだ。あの切ない出来事が夢であったのはありがたいが、結果的にボクは未だに便意に囚われているという現実を知り絶望した。もう海には行くまい。ただ、そうすれば次にどうすればよいのか。苦悩の便意はもう待ってはくれない。ボクは寝転んだまま視線を右へ左へと動かしてみた。2メートル以上もある堤防が左右に長く続いている。便意がなくても、あそこを戻るのはかなり困難だ。どうする、どうすればいい。「これはまったくもって海と堤防の板挟みだな、ふふ」 ボクの体は一刻の猶予もない状況に陥っているのだが、そんなバカなことを声に出して言いながら、今度はなぜか笑いたくなった。 (つづく)