夢のトイレ44

夢のトイレ44  車の振動は、残酷にもボクの忍耐を限界へと導こうとする。ささやかな便意ならばまだいい。時には、その後に訪れる快便すら夢想させてくれるのだから。しかし、それが甚大な便意となれば話は一転する。快便への憧れなど夢のまた夢。苦悩の腹痛と便失禁への恐怖から脳の統合機能は支離滅裂となり、交感神経や副交感神経が誤作動を起こし体中の色んな穴から色んなものが無秩序に分泌され、「絶望」という名の断崖の淵にかろうじて片手一本でぶら下がっている状況となる。その片手が今、指先のところまでずり下がり、1本また1本と短い指から順に崖のヘリから離れてゆく。いっそのこと指の力を抜いてしまったほうが楽になれるのかもしれない。そんな抑うつめいた気持ちにすらなる。残る指は2本。人差し指と中指だけ・・・  人は、この状態であとどれくら辛抱していられるものなのだろう。今にも崖の下へ転落しそうな自分の姿をボクは遠巻きに眺めながらそう思った。 (つづく)