夢のトイレ32

夢のトイレ32 それにしても空いてる。併走する国道があるためか普段も車の通りの少ない区間ではあるが、今日はその比ではない。高速に入ってから10分は経っただろうか。まだ1台も車を見ていない。いや、まだ10分も経ってないのかな。なんだか時間の感覚までおかしく感じる。しかし、そんな状況にあって確かなことが一つだけある。ボクの便意が着実に強くなってきているということ。10段階でいうと今は4くらい。まだまだ大丈夫だが、念のため次のサービスエリアに立ち寄ることにしよう。道は緩やかなアップダウンを繰り返し北へ向かう。上空から見ると緩やかな曲線を描くねずみ色の道路の中に、黒い小さな点がひとつだけ動いているのが分かる。まるで小さな虫のよう。進む先に目を向けると、そこには動くものは何ひとつない。一体全体どうしたというのだ。なぜ誰もいない。こんなに先まで見通しても、どうして車一台走ってないんだ。それに何だ、ボクは空を飛んでいるのか? どうしてこんなに遠くまで見通すことができる。どうしてボクの運転する車を自分で見ることができる。 (つづく)