夢のトイレ30

夢のトイレ30 助手席に座っているのは、トイレにいた女性だ。そして、これも到底考えられないことだが、ミラーの中にいるはずの男女を、今ボクはミラー越しではなく直接見ている。二人は互いに顔を合わせて何かしゃべっているのが分かる。しかし、車のフロントガラスに遮られて話す内容は聞こえない。でもきっとボクのことを話しているのだろう。きっとボクが持ち去ったお金のことを話しているのだろう。間もなく二人は同時にボクの方を見た。二人とも全て知っているという風な笑みをこぼした。ボクはどうしたらいい・・・  ふと、男の視線が上に動いた。それにつられてボクも上を見た。すると目の前にいたはずの男女が消え、元通りのバックミラーが見えた。ミラーの中にも男女の姿はなかった。前方を見ると信号が青に変わっている。ボクはブレーキペダルから足を離し、急いでアクセルを踏み込んだ。その瞬間、ボクの車の右側を白い乗用車がスルスルと通過し、そのまま交差点を直進していった。ボクは、急におとずれた例えようのない安堵に包み込まれながら優雅に左折し、大沼公園ICへとドライブを再開させた。 (つづく)