夢のトイレ25

夢のトイレ25  口元は「えっ」の形で中途半端に開けたまま、ボクは足元から徐々に視線を上に向けてゆく。目の前の人物がスローモーションのようにボクの頭の中でスキャンされ、驚きの正体が明確になってゆく。そして目が合った・・・  女の人だった。ボクは急に恥ずかしくなり、すぐに視線をそらし女性の横をすり抜けトイレの出口に向かった。すると女性が、「すみません」と声をかけてきた。ボクは緊張と恥ずかしさで胸骨の奥のほうがズキリと痛むのを感じた。「すみません、あの、」 トイレの出口のドアに片手をかけたままボクは上半身をひねるようにして振り返った。そしてボクが返事をするより先に女性が、「あの、それ、」  気づかれた・・・  彼女はボクのショルダーバッグを指差していた。ボクは恐怖のため足が震え始めるのが分かった。 「えっ」 つとめて平静を装おうとしたが下顎が震えて声にならない。「そのカバン、」 「・・・」 この女性は、お金の事を知っている。このあとボクは、どうなってしまうのか。  (つづく)